日本橋で同人誌印刷と各種グッズ製作を手がける「おたクラブ」を運営する大阪印刷(本社:大阪市浪速区)は、創業10年目となる今年11月、これまで日本橋に置いていた本社機能および印刷・商品製造部門などの拠点を此花区に全面移転することを発表した。
同社は2012年7月、日本橋5丁目で同人誌作家を主なターゲットにした“販売も可能なマンガ喫茶”として「おたクラブ」の営業を開始(当時の社名は「合同会社いこい」)。ほどなく店内にオンデマンド印刷機を導入、店内の作業スペースとPCを使って利用者によるデータ制作から入稿・印刷・製本までを一気通貫に可能とする営業形態へと業容を転換し、事業を軌道に乗せた。
その後は同人誌だけでなくアクリルキーホルダー・マグカップ・トートバッグ・Tシャツなど、紙製品以外のさまざまなグッズ類製造にも事業を拡大。創業5年目の2017年には東京進出を果たし、同人誌・同人グッズ業界でも相応の知名度を持つに至った。今年からは新卒正社員の採用も開始し、7月には株式会社への組織変更と同時に現社名へと改称している。
コロナ禍による同人誌販売イベントの開催縮小・中止が相次いだことで若干の悪影響はあったものの、これまで順調な成長を続けてきた同社だが、都市計画法上の用途が「商業地域」に指定されている日本橋エリアでは本格的な工場を設置できないことから、複数のビルに機械や人員を分散させながら商品の製造を行わざるを得ず、事業拡大のボトルネックとなっていた。また、本社が入居するビルの耐荷重制限からこれ以上の大型機械設置が困難になった事情もあり、本格的な工場を稼働させるための最適地を求めた結果、此花区の湾岸エリアにある常吉工業団地への移転に踏み切ることになった。
ただ、さらなる成長のためとはいえ、創業の地である日本橋からの移転はある意味苦渋の選択であったことがうかがえ、公式サイトに掲載された本社移転の告知でも「日本橋で業務拡大をしたかったのが本音です」と前置きしながら「ただ、企業として成長していく上で、工場移転やサービス内容の変更は避けることが出来ない選択でした」とその複雑な心情を吐露。そして「かなりの額を借り入れして工場移転に臨むため、弊社創業からの約10年間で一番の大決心です。皆様のご発注、心よりお待ちしております」と今後の意気込みを語っている。
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