「建物は3階建てなのになぜ『五階』なのか?」という疑問とともに、日本橋の名物として知られていた通称「五階百貨店」ビル(日本橋4-14-10)の解体が始まった。

▲解体工事が始まり、仮囲いに覆われた現在の五階百貨店ビル(9月20日撮影)
さて冒頭の疑問に立ち返ると、「五階」の名前の由来は1888年(明治21年)に近隣で建設された「眺望閣」に遡る。眺望閣は5階建て・高さ約31メートルの展望台で、大阪初の高層建築として多くの見物客が訪れ、場内では呉服や小間物、家具、文具、玩具などさまざまなものが売られるなど、さながら現代における百貨店のような賑わいを見せていた。やがて周辺にも眺望閣への集客を当て込んだ露店などが次々と立地し、それが現在につながる商店街の原型ともなっているという。
その後、眺望閣自体は建設からわずか15年程度の1904年(明治37年)頃に取り壊されたとされるが、そのシンボルとしてのインパクトは強く、やがて周辺一帯の名称に「五階古物市場」「五階昼店」「新五階」など「五階」の名が冠されるようになり、この建物名にもそれが踏襲され現在まで残ったものである(近隣にはもう一つ、「日本橋五階百貨店」を名乗る平屋建ての建物も別に存在する)。

▲日本橋商店会内に掲示されている、在りし日の眺望閣と「五階」の由来について。日本橋商店会もかつては「新五階」を名乗っていた
なお、このビルでは2019年秋に1階の空き店舗で入居者を募集する際「約6年間限定」という条件が付いていたことから、このタイミングでの解体は数年前から計画されていたものと思われる。
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